華僑忍法のひとつに、秘宝「白手起家(パイソーチーチャー)」(無一文で家を興す)があります。
着のみ着のままで来日し、同郷人の成功者の家に寄食し、物置を改造したようなところに寝泊まりしてウロチョロしているうちに、裏通りに面した空間を借り受け、小さな雑貨屋を出す、今時どこへ行っても見当たらないような売れ残り品を積んで、貨物船の船乗り相手に、結構忙しそう、とみる間に、大通りに土産物屋を開く。衣料、食品、缶詰などを並べていると、近くの相当の土地が彼の所有だという噂が立つ。まさかそんなに早く?と首をかしげているうちにそこにビルが建ち、その社長が彼で、一階が喫茶店、二階がビリヤード、三階が..........くどくど言うまでもありません。こんな話って華僑の間では珍しくとも何ともない話です。このようなケースの仕掛けはいったいどうなっているのでしょう?
中国人は三代までは親戚と考えています。「謝」とか「邸」とか.....同姓でしかも同郷出身なら他人とはみなしません。そして、そのような人を頼って身を寄せるようになるのです。身を粉にするといった昔ながらの働きぶりを見せているうちに、小さい無尽講のような会に入れてもらえます。無尽講方式にはいくつものグループがありますが、その中の金額の低いものにでも入れてもらえば、掛金は職場のボスが建て替えてくれて、やがて順番が廻ってくれば少しまとまった現金を手にすることができます。あとは、毎夜寝床で描いていた作戦を実行に移します。
親しい人同志のお金の賃借には証文も保証人も不要の華僑のこととて、この方式はなおさら、担保、印も不要です。おまけに、後継者を早く一人前にして仲間の戦力にするのが狙いなので「お金は出しても口は出さぬ、儲けてもリベートは不要客気(プーヤオコーチ・心配しないでいいよ)」である。もちろん、このような援助は、信頼しきった相手に限られるということは言うまでもありません。
ボスたちは気が長いです。面倒を見た若者が一本立ちし、大きな店を持ち、本来の仕事を見出して自分と同列にまでのし上がってきたときに初めて利用し合うのです。こうしてできた新しいボスは自分にされた時と同じことを他の人に施します。そして一族はますます繫栄するのです。
日本でも「昔の丁稚奉公から出世して一代を築く」といったような感じで似たような話を聞いたりするような気がします。やっぱし人のご縁ってのは大事なんですね。痛感します。しかし、現在は多くの情報を入手しやすくなったり、パソコンやインターネット環境が進化したことで、昔に比べて立身出世するチャンスが増えました。ありがたい世の中です(笑顔)
そこの成功しているあなた、信頼できる知人がいたら無尽講方式で育ててみるのはいかがですか?